ダイナミックプライシングは最適な価格ではない?

こんにちは!
IT企業に勤めて、約2年間でデータサイエンティストになったごぼちゃん(@XB37q)です!

このコラムでは、価格を自動で算出するAI技術であるダイナミックプライシングを紹介します!
ダイナミックプライシングとは、様々な業界で使用されているAI技術のため、1回は聞いたことがあるかもしれませんね!

ダイナミックプライシングが解決する課題

航空券は需要で値段が変化する
航空券は需要で値段が変化する

ほぼすべての企業は何かのサービスや商品(以下サービスに統一)に価格を設定し、販売をしています。
設定した販売価格が、利益に直結します。

それではこの販売価格はどのように設定しているのでしょうか?
この販売価格の設定をAIを使用して適切な販売価格にすることで、利益を向上させる技術が「ダイナミックプライシング」です。

需要と供給があるサービスにおいて、適切な販売価格は変化していきます。
いつどの時点で誰が買うかと変化する市場に対して、一定の販売価格が適切ということは考えにくいでしょう。
なぜなら、販売価格には、サービスに必要な原価や人件費、世の中の経済状況、需要、競合商品、天気、月の傾向など様々な要因が関係しているからです。
例えば、飛行機は年末や長期間の休みなど繁忙期に価格が高くなり、繁忙期ではない時期は価格が下がります。
他にもホテルや地域などの観光スポットやスポーツ観戦チケットなどは、需要と供給によってサービスの価値は変わると思います。

このように様々な要因を踏まえて、サービスの販売価格を設定することを、人間が行うことは難しい状況です。
なぜなら、無限に近い膨大な要因を販売担当者がすべて把握することはほぼ不可能であり、自分の経験と勘に頼って判断することが多いからです
そのため、適切な販売価格を設定することが難しいという課題が多くの企業にあります。

このように様々な要因を加味して適切な販売価格を設定しようという技術がダイナミックプライシングです。
近年、テクノロジーの発展とともに、AIの技術発達やビッグデータの収集などが可能になり、ダイナミックプライシングの精度が向上していくことが見込まれて、様々な業界で活用されています。

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングを使用した場合
ダイナミックプライシングを使用した場合

ダイナミック・プライシングはホテルの料金や航空券などで昔から活用されている技術です。

旅行にはシーズンがあるので、オンシーズン(繁忙期)とオフシーズン(閑散期)の価格設定が存在していました。
日本の場合であれば、5月のゴールデンウィーク、8月のお盆、年末年始などはホテルや航空券の料金が高くなります。
このように、商品やサービスの需要に応じて価格を変動させる仕組みを、ダイナミック・プライシング(Dynamic Pricing:変動料金制)といいます。

ダイナミックプライシング(変動価格制)とは、需要と供給に合わせ、利益を最大化できる最適な値段設定を見つける手法です。
通常のマーケティングのように、商品の原価や仕入れ値などに応じて値付けをするのではなく、そのシーズンや販売時期の「消費者ニーズ」に応じて値付けを行うのがポイントです。
例えば、ゴールデンウィークやお盆の時期などに航空料金やホテルの宿泊料が上がるのも、ダイナミックプライシングのもっとも身近な一例です。
航空・ホテル業界などは消費者の需要と供給が予測しやすく、適正価格を算出しやすいため、ダイナミックプライシングが積極的に取り入れられてきました。

それではなぜ今このダイナミックプライシングの技術が流行してきているのでしょうか?
それは技術の進化です。

あらゆるモノがインターネットにつながり、センサーや測定器を通じて様々なデータを収集できる「モノのインターネット(IoT)」を活用することで、従来はデータ化が難しかった消費者の行動をリアルタイムに蓄積・分析できるようになりました。
そして、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)の技術が発達し、従来より予測精度が高くなっています。
そのため、消費者の需要と供給が1日単位で細かく変動するスポーツ観戦、ライブ、アミューズメント施設といった分野でも、ダイナミックプライシングがされています。

そうして、たくさんの業界でダイナミックプライシングを活用しようという動きが起こっているのです。

ダイナミックプライシングが使われている事例

Uber

アメリカの配車サービスであるUberは、個人がタクシーとして乗客を乗せることができるサービスです。

公式サイト:https://www.uber.com/jp/ja/ride/ride-options/

Airbnb

価設定にはダイナミックプライシングが1年ほど使われています。
ある日の宿泊予約確率を予測した後に、最適な価格を予測しています。

公式サイト:https://www.airbnb.jp/

Airbnbで使用しているダイナミックプライシングの方法は、他コラム「Airbnbで使われているダイナミックプライシング」で紹介しているため、具体的にダイナミックプライシングの方法を知りたい人はご覧ください。

Jリーグ

2021年からJリーグでもダイナミックプライシングを導入しています。

ダイナミックプライシングのメリットとデメリット

ダイナミックプライシングのメリットとデメリット
ダイナミックプライシングのメリットとデメリット

ダイナミックプライシングを活用することで、企業側だけでなく利用者側にもメリットがあります。
この章では企業側と利用者側のそれぞれの面でメリットとデメリットを整理していきます!

企業側のメリット

収益の最大化

1番のメリットは収益の最大化です。
ダイナミックプライシングが解決する課題の通り、企業の収益を最大化するために、ダイナミックプライシングは使われています。
需要が多い場合には高額な販売価格を設定することにより利益を大きくし、需要が少ない場合には定額な販売価格を設定することにより、予約数が0になることや在庫・廃棄などの無駄を減らすことが可能です。

設備や人の有効活用

収益だけでなく設備や人を有効的に活用することが可能です。
例えば、繁忙期は販売価格が高額のため、比較的販売価格が低額な閑散期に行く利用者も増える可能性があるため、繁忙期とそうでない閑散期の需要を同じにすることが可能です。
そのため、設備や人が無駄になる期間が少なくなることにより、設備や人を有効活用できます。

企業側のデメリット

ダイナミックプライシングにもメリットだけでなく、デメリットが存在します。

価格変更の費用、AIモデル構築、システムの費用

まずは費用がかかることがデメリットに挙げられるでしょう。
価格を変更する際にかかる人の費用、AIモデル構築を依頼する費用、システムを開発・改修する費用など、様々な費用が発生します。
課題を解決するためにどの技術を導入することも費用は掛かるのと同様に、ダイナミックプライシングも費用が発生します。

利用者の反感を買う場合があり、サービス利用や購入の妨げになる

ダイナミックプライシングで価格の変動が大きいことにより、利用者の反感を買う可能性があります。
悪い言い方をすれば、利用者の足元を見ていると思われることです。
利用者が持つ企業のイメージが悪くなれば、当然利用者は減ることにつながります。
大幅に価格を変動させることは、ダイナミックプライシングのデメリットかもしれません。

データがないものは考慮できない

AIを使用しているダイナミックプライシングは、当然データにないものは考慮できません。
例えば、初めて到来したコロナショックや、急に発生した出来事を販売価格の設定に考慮することは不可能です。
現代のAI技術は事前にわかっているものへの対応は優れていますが、需要の変動要因に対する要素の把握は不十分です。
現状は、人間が出来事をデータ化するという作業や、データの収集などが必要不可欠になっています。

利用者側のメリット

次は利用者側のメリットです。

タイミングが合えば、低額な価格でサービスを利用可能

ダイナミックプライシングは需要をもとに販売価格を設定します。
そのため、他の利用者とそのサービスを利用したい時期が同じにならなければ、低額な価格でサービスを利用できる場合があります。
これは利用者にとっても大きなメリットだと思います。

利用者側のデメリット

どうしても必要な場合、高額でも購入せざるを得ない不条理が生まれる

先ほど紹介したメリットがある反面、そのメリットもデメリットになる場合があります。
それは、他の利用者とそのサービスを利用したい時期が同じになってしなえば、高額な価格でサービスを利用することになります。
通常の価格より高くなっているときにそのサービスを利用することは、利用者にとって大きなデメリットになるでしょう。

ダイナミックプライシングの注意点

需要と供給のバランス
需要と供給のバランス

需要と供給を予測し設定した価格が、厳密に最適な価格だったかどうかは正確に分かりません。
需要を正確に確認することは不可能だからです。

一般的には、需要が高いほど価格を高くしても利用・購入される可能性が高く、需要が低ければ価格を低くしなければ利用・購入される可能性が下がります。
サービスを利用・購入された場合、もっと価格を高くしても利用・購入されていた可能性があります。
その逆で、サービスが利用・購入されなかった場合、もっと価格を低することで利用・購入されていた可能性があります。

しかし、それらは実際に観測することができないため、最適な価格を把握することはできません。
あくまでも実際に購入した人数やその価格などのデータを需要と定義しているという解釈になります。

機械学習では予測と正解(最適な価格)との誤差を手掛かりにして学習を進めてくため、正解(最適な価格)が分からない状況ではAIモデルを構築することができません。
正解(最適な価格)が分からない ため、Airbnbは、最適ではない価格を定義することでAIモデルを構築しています。

まとめ

  • ダイナミックプライシング(変動価格制)
    • 需要と供給に合わせ、利益を最大化できる最適な値段設定を見つける手法
  • ダイナミックプライシングが使われている事例
    • Uber
    • Airbnb
    • Jリーグ
  • 企業側のメリット
    • 収益の最大化
    • 設備や人の有効活用
  • 企業側のデメリット
    • 価格変更の費用、AIモデル構築、システムの費用
    • 利用者の反感を買う場合があり、サービス利用や購入の妨げになる
    • データがないものは考慮できない
  • 利用者側のメリット
    • タイミングが合えば、低額な価格でサービスを利用可能
    • 利用者側のデメリット
    • どうしても必要な場合、高額でも購入せざるを得ない不条理が生まれる
  • 最適な価格は分からない
    • サービスを利用・購入された場合、もっと価格を高くしても利用・購入されていた可能性がある
    • サービスが利用・購入されなかった場合、もっと価格を低することで利用・購入されていた可能性がある
    • 実際に購入した人数やその価格などのデータを需要と定義している
    • 正解(最適な価格)が分からない状況ではAIモデルを構築することは不可能
    • 最適ではない価格を定義することでAIモデルを構築することが可能